2011年9月(社内回覧書類より抜粋)

 長く暑い夏が終わり、朝晩の涼しさを感じる季節になってきました。しかしながら、台風の影響で、近畿地方をはじめとして多くの地域で記録的な豪雨により、多くの被害と被災者が発生いたしました。被災者が出るたびに、出来うる最善の対応がなされていたのかを疑問に思います。公共工事の削減ばかりが声高に叫ばれ、他国に比べ急峻な山岳地帯、急流な河川が多い国において常に安全な生活ができるよう、常にインフラ整備をしていくのが国家の義務の筈です。何より失った人命はお金でも買えないのですから。
 また、先日、立山砂防の現場をパトロールに行ってきました。幸いにも、今現在、富山県には災害がおきていません。しかし、しばらく前までは多くの災害が起こっていた証であると感じました。我々の業種は生活していく上で絶対に必要な業種だと心に刻みながら帰ってきました。皆さんには、毎日の健康管理をしっかりし、現場運営も同様、安全な作業をお願いいたします。
先日より、「逆境を超えてゆく者へ」~爪先立ちで明日を考える~(著者:新渡戸稲造)との著書名に感銘し一読してみました。今まさに逆境のさなかにいる・・・そんな時に読むべき本だと感動を覚えました。

決心の継続は大事をなす基

 志をたてること、何かを決意することは、誰でも幾度となく経験する事であり、それが決心である。しかし、この決心を継続させることは容易ではなく、たいていは途中で厭(いや)になるものであり、最後まで成し遂げることは極めて稀なことである。
西明寺時頼は、「幾たびか思ひ定めて変わるらん 頼むまじきは我心なり」と詠み
徳川家康は、「人の一生は重荷を負うて遠き道をゆくがごとし」と言い
詩人ゲーテにおいても、「Ohne Hast, ohne Rast (急がず、休まず) 」とも言っている
古文の中にも、「怠らず行かば千里の外も見ん 牛の歩みのよし遅くとも」と言っている
(牛の歩みのように遅くてもいいから、一歩一歩と進み続ければやがて必ず千里の遠きに到達することができる)
大事を成し遂げるにはこの継続心がなければならない。
どんなに技量がある者でも、最初に立てた志を継続して行わなければ、そのことは決して成功しない。
青年が志を立てるのは経糸(たていと)を整えるのと同じであり、人生のどこからどこまでをどのような模様に織るかという方針を定めることである。しかし、経糸だけでは織物はできない。緯糸(よこいと)が経糸と交わることで初めて美しい織物ができるものである。1本ずつの糸も毎日これを織っていけばやがて立派な織物となり綺麗な模様ができる。
同様に志も毎日継続していかなければ物にならない。経糸緯糸があって織物ができるように、志と毎日の実行があって初めて目的が達成されるのである。
日本人は元来、物事に飽きやすい国民である。したがって事に当たっては最後まで継続する決心をし、それを実行するよう修養しなければならない。
最も必要なことは、常に志を忘れないよう心にかけて記憶することである。
逆境を切り抜けようとせず、ヤケになって堕落する者が世間にはたくさんいる。これは人物としての背丈が低く、前方が見えないからだと思う。少し爪先立ちして前を見れば、生きている間には一条の光明が前途に輝き、希望の光が見えてくるものである。

この逆境をこえてゆく者、または乗越えてしまっている者は、多々いると思います。その者たちは決心を継続するものであり、継続できた者であると思う。当社も新しい期に入ります。当初の目標を大事にし、日々の継続に心掛け目標達成まで頑張りましょう。

2011年9月22日
上田  信和

※ 新渡戸稲造:1862年~1933年農学者で、倫理哲学者。国際連盟事務次長も務め、著書 Bushido: The Soul of Japan(『武士道』)は、流麗な英文で書かれ、長年読み続けられている。五千円札の肖像としても知られる。
※ 西明寺時頼:鎌倉幕府の第5代執権であった北条時頼の隠退後の別名

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