2014年8月(社内回覧書類より抜粋)

 お盆もあけ、充分なリフレッシュが出来ましたでしょうか。いろんな予定をそれぞれ過ごされたと思いますが、お盆の間、天気が悪く、全国のあちこちで台風や大雨の被害が出ております。まだまだ残暑厳しきおりです。熱中症や夏風邪等体調の管理に気をはらっていただき、業務推進に集中出来るようお願い致します。
 さて、政治は、国土の強靭化・担い手3法の改正等が前向きに進み始めました。そんなおり、元国土交通省技監で、現在は国土政策研究所の所長・京都大学大学院経営管理研究科客員教授の大石久和氏の講演『「建設青年が知るべきインフラの意味」誤解と曲解からの脱出』の講演を聴く機会を得ました。
 講演の中で、国の成り立ちを考える上で、日本人と外国での公共事業の捉え方が違うという内容がありました。『国家・クニ』という現在の日本語の漢字『国』の起源は、中国での漢字『國』で、『戈(ほこ)』を持って囲いの中を守る意味である。囲いとは城壁であり『万里の長城』が象徴される。ヨーロッパにおいても同様で、パリにおいても、しっかりとした城壁によって守られていた。城壁が無いと国家として成り立たないという意味では、いわゆる城壁は一定規模以上の『國』の公共事業とだったと言える。
ところが日本はというと…四方を海に囲まれ、外国からは攻めてこられず『城』はあるが周辺のムラを含めた城壁自体がありません。これは、江戸時代にはすでに3,000万人の人口と7万のムラがあり(平均約400人が1つのムラを形成)、そこで共同作業をしながら自給自足の生活を行なうというのが当たり前の生活様式でした。水を引き、家を建てる…それはムラの中で全て完結出来るものであり、他のムラへ攻めるという事はなく、殿様がどのムラを支配するかの問題であり、公共事業はムラにおける共同作業にしかなかったのです。
よって、公共事業自体が特異的な言葉として扱われ、マスコミの餌食にもなり得たと言っても過言ではないのかもしれません。失われた20年とも言われている現在、他の国々では
アメリカではオバマ大統領が2013年の11月の演説で「実際に雇用を創出し、経済を成長させる投資すべきであり、その一つが、新しい道路・橋梁・学校港湾の建設である。アメリカのインフラを考えてみると、今日の世界経済において、最も早く信頼性のある交通・通信網が存在する場所であればどこでも事業活動は定着し発展する。中国やヨーロッパ各国、ブラジルなど多くの国で非常に多くの資金をインフラ整備に投資している。我々は何をしているのだろうか?」と演説している。
イタリアのロマーノ・プロディ首相は2006年3月にすでに講演で「インフラストラクチャーへの投資を怠っては、グローバル化に伴う競争の中でイタリアは生き残れなくなる」と述べている。
ドイツのメルケル首相は2013年の12月に出した3党合意文書において「モビリティーは個人の自由、社会参加および豊かさと経済成長のための前提である。そのために必要な基盤が質の高い交通インフラである。それは、グローバル社会におけるドイツの競争力を保証するものとなる。(中略)長年にわたる構造的な過小投資に対して、根本的な改革により交通路の計画および財源確保を、長期的な信頼性と実効性のある新たな基盤の上に築いていきたい」として発表している。

「国土に働きかけなければ、国土は恵みを返さない。国土は働きかける度合いに応じて、我々に恵みを返してくれる(森林・耕作地・都市・道路・鉄道・空港・港湾・河川、そして自然災害に対する防災・持続可能な環境)」そんな考え方を、私たちはもっと声だかに発信していく必要があると感じました。

2014年8月25日
上田 信和

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