2015年11月(社内回覧書類より抜粋)

11月に入り北陸特有の鉛色の空の日が多くなってくる季節となりました。

今年の冬は暖冬とも言われていますが、どうなるのでしょうか。

現業の事を考えると降雪は少しでも遅いほうが助かるのですが、

先ずはスタッドレスタイヤの準備でしょうか、

いつ雪が降ってもよいように段取りだけは先に先にと心がけていきましょう。

 

さて、東洋経済社の特集で、

日本人の生産性が著しく低い理由…従業員の健康に気を配らない企業は負ける!

との記事がありました。

 

厚生労働省が発表した「就労条件総合調査」(2015年)によれば、

日本における常用雇用30人以上の4432法人のうち、

2014年の年休取得割合は47.6%に過ぎず、

100%近い国もあるヨーロッパや70%台のアメリカなどと比べて、

日本は依然として先進国の中では最低水準を記録し続けているそうです。

 

原因はというと

「長い時間仕事をするほど評価が高い」

「休暇や休憩は取らないほど評価が高い」に代表されるような、

日本企業には多かれ少なかれ「休む=悪」という空気が職場に蔓延しているからだそうです。

 

日本独特の「職場の空気」は「休む」ということを減らし、

不眠や睡眠不足あるいは「心の病気」の温床となっているとも言われています。

専門家の臨床においても、「心の病気」は、薬の処方や多少話を聞いたぐらいでは改善せず、

仕事環境をなんとかしなければ治癒に結びつかないのが現実のようです。

 

「ダラダラ残業しているヤツのほうが、残業手当も稼いでいるし、上司のウケがいい」

「会社から有給休暇をすすめられても、こんな忙しさでは休めるワケがない」

というようなツブヤキが聞こえてきそうです。(経済的な理由が潜んでいるのかもしれません)

 

しかし、それは

「みんなが忙しいのに、自分だけ休むのは申し訳ない」

という自責感や罪責感や、

「みんなが忙しいのにお前だけ休むなんて」

という他を攻撃するといった感情的な問題が潜んでいることが、

休みをとりづらくしている遠因と考えられています。

 

休みは疲労解消といった防御的な働きだけではなく、

もともとの自分のパフォーマンスを高めてくれるというポジティブな作用もありますし、

睡眠は、日中に学んだ必要な記憶・経験を脳内で増強させる学習促進作用があることも、

数多くの研究結果から分かっています。

 

なにかを覚えながら作業をしながら別のことに取り組んでいく機能を

「ワーキングメモリ」や「段取り脳」と呼ばれ、

複雑な仕事や料理などが、ワーキングメモリを必要とする作業の代表格であると言われています。

 

そのワーキングメモリは、疲労や睡眠不足によって容易に機能が低下する事も

多くの研究でも示されている事実であります。

 

また、「ランナーズハイ」などやればやるほど仕事や作業にハマってくるという現象は、

それにより発生される「ドーパミン(意欲や集中力を高める神経伝達物質)」

によるものとして知られており、

この「ドーパミン」は、疲れ果ててダウンする寸前の脳をあたかも

「まだまだできる」と誤認させることによって、結果的には、

回復に長い時間を要する病気になってしまう危険性があると言われています。

 

こういった人間の特性の研究から、

日本でも政府や会社が従業員に休暇を推奨するようになってきています。

しかし、「睡眠時間をちゃんと取ろう」「年休を申請しよう」「休憩をこまめに取ろう」

いくら有給休暇を取りなさいと叫んでも、現場はそうはいかないのが現実です。

 

むしろ、組織による仕事量のマネジメントもなく、

有休取得目標値達成のためだけに有給休暇を「強制」される事も多く、

結果的には、他の日が残業になるときや、

自宅に仕事を持ち込まざるをえないなど、

本来の有給休暇の目的から外れた、

本末転倒ともいえるひずみが生じているのも現実なのでしょう。

 

組織の健康と健全な経営の双方を維持していこうという経営方針を

「健康経営」と言うそうです。

それだけ従業員の健康など二の次という考え方が支配的だったと言われても仕方がないのが現状です。

今なお、「ブラック企業」に代表される、

職員の健康を度外視した企業が世の中に数多くあるのも現実です。

 

組織のマネジメントも当然重要なのですが一人一人の心がけが、

「休む=悪」という空気を浄化させ、より健康的な職場の空気を作り出していくと思います。

お互いに、よりよい職場の空気の醸成に努力していきましょう。

 

2015年11月25日

上田 信和

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