2014年1月(社内回覧書類より抜粋)

 新年あけましておめでとうございます。新年早々、富山県民にとって素晴しい出来事がありました。富山第一高校が全国高校サッカー選手権大会で全国優勝したことです。後半の残り数分までは2対0で負けていたにも関わらず、残り3分で1点、アディショナルタイムで同点、そして延長後半9分で逆転という筋書きのないドラマとはこういう事なんでしょうか。本当に喜びと同時に感動を頂いた試合だったと思います。この優勝の影には平素の厳しい練習はもちろんのこと、最後まで諦めない気持ち、仲間を信じる気持ち、そして徹底的な相手チームの分析などがあった事と思います。選手のほとんどが富山県からの生徒という事もあり、富山県民の真面目で一生懸命な性格も功を奏したのではないでしょうか。富山に対する誇りを感じ、ドンヨリとした冬の北陸の空が国立競技場のように爽やかに晴れわたった気がしました。
 さて、年末年始の時間を使って藤原正彦氏の「グローバル化の憂鬱」という本を読みました。藤原氏の卓越した見識と様々な経験を綴ったエッセイ集と言うべき本かと思います。その中に書かれていた「危ない東京一極集中」の一部を紹介致します。

「東京は文化度に関して世界1と思う。レベルの高い音楽会、美術展、演劇などが一年中毎日、東京のあちらこちらで催されている上、上野の美術展などはいつも満席。イギリスではとても考えられない」と日本の研究をしている女性から聞きました。東京が類い稀な経済力を持ち多数の芸術愛好者を抱えているというのは日本人としては誇らしい事ですし、一流の芸術にいつでも触れる事が出来るというのも東京に住む者にとっては幸せな事です。しかし、ここ20年ほどで地方の中小都市にある駅前商店街はシャッター通りとなりました。市場原理主義を盲信し「小さな政府」を目指す事によって、地方分権と言いながら地方交付税交付金、国庫補助金、公共投資を大幅に削減し、地方の経済を一気に窮地に追いやりました。
 例えば、地方の子供が東京の大学に入学すれば一人につき200万円ほどが地方から東京に送金されるであろうし、地方の人たちが金融機関に預けたお金も、そのかなりの部分は東京の企業に貸与され、そこから生まれた企業の利潤に対する法人税や、社員の所得税は国庫に入ってしまいます。何らかの形で国が地方へお金を戻さない限り、地方はジリ貧になり、医療や教育など全国一律の公共サービスすら続けられなくなってしまいます。
 新幹線で東京と3時間以内で結ばれるような地域ではほぼ例外なく、ストロー効果により若者の首都圏への流出、本社の東京移転、地方商店街の地盤沈下が起きています。過疎化は農村部だけではなく地方全般で起きる。しかも、地方の高校を卒業し大都市の一流大学を出た優秀な若者のほとんどは地元に戻りません。これは地方の沈滞を恒久化させることでしょう。
東京への一極集中は安全、安心という意味でも危険です。大地震、大津波、大規模テロ、軍事攻撃などのどれかが東京を襲う確率は低くはない。東京は、ニューヨークやロンドンよりも脆弱と言ってもよいでしょう。そうなると東京はあっけなく壊滅し国家は混乱のるつぼとなる。
 公機関・大企業・大学などの地方移転を計るべきであろう。アメリカのような巨大な国でも企業や大学は完全に地方に散在しています。カリフォルニア州ほどの面積しかない日本でどれだけ地方に散在しようがアメリカと比べれば密集状態なのです。

 新幹線開業まで残り、1年と数ヶ月です。水を差す気持ちは全くありません。しかし、東京まで2時間余で行ける、そんな地方間競争に富山が、そして我々の地域が生き延びる事が出来るのか?そういう事を真剣に考えながら過ごす1年なるような気がしています。何故なら地域の発展があっての建設業でもあるからです。地域に安全・安心を提供するのは僕たちだ!と信じ、富山に誇りを持ちながら、今年一年、精一杯頑張っていきましょう!

2014年1月24日
上田 信和

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